人は誰もそれぞれ独特の感性を持って生まれてきているものです。自分の感性がどんなものか自分で分かっている方、まだそれを知らない方もいるのです。
歌を聞いて、それが初めて聴いた歌なのに、すぐそれを覚えていまう歌。一度聴いた曲なのに、いつまでも心に残る曲。初めて見た絵なのに、引き込まれて見入ってしまう絵。映画を見て涙をそそり、何度見ても同じシーンで涙が流れてしまう映画。初めて会話を交わした人なのに、どんどん会話が弾んでしまう方。それらが貴方の感性の特徴で、貴方の性格の基体をなすものです。感性をそそるその作品が、多くの方々にも共通に感動を与えるものであれば、それが名歌であり、名曲であり、名画であり、それが人徳のある方なのでしょう。
山も同じです。多くの方々に愛される山が名山です。山小屋も同じです。初めて訪ねた瞬間、自分の感性に触れる山小屋があるものです。私にとってヒュッテ・ジャヴェルがそんな山小屋です。単に山歩きの途中で泊まった山小屋ではなく、重い山靴を脱ぎ、スリッパで中へ入ると、南西に向いた広いガラス戸から入る日の光で明るくされた広い食堂があり、その食堂の奥に床が鉄平石が敷かれ、レンガ造りの暖炉のあるサロンにグランドピアノが置かれてある。それを見た途端、山小屋というより、ドイツ語のヒュッテ(Hütte)と呼ぶにふさわしいたたずまいに、日ごろの職場や家での生活の場から、飛行機に乗らずに、和風であるにもかかわらずヨーロッパアルプスのHütteに来た思いになる。そんなたたずまいのヒュッテがわたしの感性に合い、しばしば訪れ、また友人を誘って訪れています。もう何人誘ったことだろう。彼らは一様に感動し、必ずまた訪ねると言う。
私とヒュッテとの衝撃的な出会いについて書きはじめると長くなるのでこの辺で止めにしましょう。
渡辺 徹 厚木市(自称里山市)在住
(厚木基地は厚木市にはないのです。厚木基地は厚木市のはずれの相模川の向こうの海老名市のさらに向こうの綾瀬市と大和市にまたがってあるのです。だから私は厚木市を相模大山の麓の「里山市」と呼びたいのです。)